閉経後の女性に多い骨粗鬆症:その原因と今日からできる予防習慣
骨の健康は、年齢とともに変化するご自身の体の中でも、特に意識しておきたい大切なテーマです。閉経を迎え、体の変化を感じ始めている方もいらっしゃるかもしれません。今回は、閉経後の女性に多く見られる骨粗鬆症について、その原因と、日常生活で無理なく始められる予防習慣についてご紹介いたします。
骨粗鬆症とはどのような状態でしょうか
私たちの骨は、一度作られたら終わりではなく、常に古い骨が壊され(骨吸収)、新しい骨が作られる(骨形成)という新陳代謝を繰り返しています。このバランスが保たれることで、骨は健康な状態を維持しています。
骨粗鬆症とは、この新陳代謝のバランスが崩れ、骨の強度が低下し、骨折しやすくなる病気のことです。骨の内部がスカスカになり、ちょっとした転倒やくしゃみ、あるいは日常生活の動作でさえ骨折のリスクが高まってしまいます。特に、背骨が押しつぶされる「圧迫骨折」は、背中が丸くなったり、身長が縮んだりする原因にもなり得ます。骨粗鬆症は自覚症状が少ないため、「いつの間にか骨折していた」というケースも少なくありません。
なぜ、閉経後に骨粗鬆症のリスクが高まるのでしょうか
女性の骨の健康と深く関係しているのが、女性ホルモンの一種である「エストロゲン」です。エストロゲンは、骨の新陳代謝において骨が壊れるのを抑え、骨密度を維持する大切な働きをしています。
閉経を迎えると、このエストロゲンの分泌が急激に減少します。その結果、骨を壊す働きが骨を作る働きを上回り、骨密度が低下しやすくなるのです。これが、閉経後の女性が骨粗鬆症になりやすい主な理由とされています。
今日から始める骨の健康習慣:食事編
骨の健康を保つためには、日々の食生活が非常に重要です。骨を作る材料となる栄養素をバランス良く摂取することを心がけましょう。
1. カルシウム
骨の主要な成分です。積極的に摂りたい栄養素の代表格と言えます。
- 多く含む食品の例: 牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品、小魚(しらす、煮干しなど骨ごと食べられるもの)、豆腐や納豆などの大豆製品、小松菜やモロヘイヤなどの緑黄色野菜。
- 取り入れ方の工夫:
- 牛乳を料理に使う(シチュー、スープなど)。
- ヨーグルトを朝食やおやつにプラスする。
- 小魚を常備菜として用意する(佃煮、酢の物など)。
- 大豆製品は毎日いずれかの形で取り入れる(味噌汁、煮物など)。
2. ビタミンD
カルシウムの吸収を助け、骨への沈着を促す重要な役割を担っています。
- 多く含む食品の例: きのこ類(しいたけ、きくらげ、まいたけなど)、鮭、さんま、いわしなどの魚類。
- 取り入れ方の工夫:
- きのこは炒め物、スープ、味噌汁など幅広く活用する。
- 魚は週に数回食卓に取り入れるようにする。干ししいたけは、日光に当てることでビタミンDの量が増えるため、おすすめです。
3. ビタミンK
骨の形成を促し、骨質を良くする働きがあります。
- 多く含む食品の例: 納豆、小松菜、ほうれん草、ブロッコリーなどの緑黄色野菜。
- 取り入れ方の工夫:
- 納豆は手軽に摂れる優れた食品です。毎日1パックを目安に。
- 緑黄色野菜は、食事のたびに意識して取り入れるようにしましょう。
これらの栄養素をバランス良く、無理なく摂り続けることが大切です。一つの食品に偏らず、様々な食材を組み合わせることで、より効果的に栄養を摂取することができます。
今日から始める骨の健康習慣:運動編
骨は、負荷がかかることで強くなる性質を持っています。適度な運動は、骨密度を高め、骨を丈夫にするだけでなく、筋肉をつけ、バランス感覚を養うことで、転倒による骨折のリスクを減らす効果も期待できます。
1. ウォーキング
特別な道具も必要なく、いつでも手軽に始められる運動です。
- 実践方法: 一日20分から30分、少し汗ばむ程度の速さで歩くことを目標にしてみましょう。慣れてきたら、少しずつ時間を延ばしたり、歩く距離を増やしたりしてみてください。
- ポイント: 猫背にならず、背筋を伸ばして、やや大股で歩くことを意識すると良いでしょう。
2. かかと落とし
自宅で簡単にできる、骨に良い刺激を与える運動です。
- 実践方法:
- まっすぐ立ち、かかとを上げてつま先立ちになります。
- ストンと力を抜いてかかとを落とし、床に軽く衝撃を与えます。
- これを10回程度繰り返します。朝、昼、晩など、気づいた時に行うと良いでしょう。
- ポイント: 無理のない範囲で、ご自身のペースで行ってください。膝や股関節に痛みがある場合は、医師にご相談ください。
3. 筋力トレーニング
スクワットなど、大きな筋肉を動かす運動も骨の強化につながります。
- 実践方法(椅子を使ったスクワットの例):
- 椅子の前に立ち、足を肩幅に開きます。
- 椅子に座るように、ゆっくりとお尻を後ろに引いて腰を下ろします。膝がつま先より前に出ないように注意し、太ももが床と平行になるくらいまで下げます。
- ゆっくりと元の姿勢に戻ります。これを10回程度繰り返します。
- ポイント: 無理のない範囲で行いましょう。慣れるまでは、壁に手をついたり、背もたれのある椅子を活用したりして、転倒しないように注意してください。
日常生活の中で、エスカレーターではなく階段を使ったり、一駅分歩いてみたりするだけでも、骨への良い刺激になります。できることから少しずつ、運動習慣を取り入れてみましょう。
食事・運動以外の予防策
- 日光浴: 日光を浴びることで、体内でビタミンDが生成されます。一日15分から30分程度、直接日光に当たる時間を設けることがおすすめです。冬場や日当たりの悪い場所にいることが多い方は、サプリメントの利用も検討できますが、事前に医師にご相談ください。
- 禁煙と節酒: 喫煙や過度な飲酒は、骨密度を低下させる要因となります。骨の健康のためにも、禁煙を心がけ、アルコールの摂取は適量に留めることが大切です。
- 定期的な骨密度検査: ご自身の骨の状態を知るために、定期的に骨密度検査を受けることをおすすめします。特に閉経を迎えた方は、一度は検査を受けてみましょう。かかりつけ医にご相談ください。
まとめ:今日からできる「骨活」を始めましょう
閉経後の女性にとって、骨粗鬆症は避けて通れないテーマのように感じられるかもしれません。しかし、ご自身の生活習慣を見直し、今日からできる小さな工夫を積み重ねることで、骨の健康を守り、骨粗鬆症のリスクを減らすことは十分に可能です。
食事、運動、そして生活習慣の改善。これらは特別なことではなく、日々の暮らしの中で少し意識を変えるだけで実践できることばかりです。焦らず、ご自身のペースで、できることから一つずつ始めてみませんか。健康で活動的な毎日を長く続けるために、ぜひ「骨活」を始めてみましょう。